「さすがは王弟殿下だね、リヨンのメゾンで注文するおつもりだったんだ」

出任せとは言え、アシュフォード殿下に対して
『私がデビュタントの用意をします』と仰った
オルツォ様には、今回ドレスの注文をした事を お伝えしました。


「ネネの為にバロウズまで来てくださると仰ってくださいましたし、ネネはご報告させていただきました」 

「それ、もう言わないで……」

オルツォ様が両耳を塞いで俯かれました。


『勝手な話もするけれど、とりあえず黙って俺の横で聞いてて』
 
事前にそう告げられていたから、覚悟はしていましたが。
あれだけ殿下と祖母の前で、『ネネ』を連発されて、私こそが耳を塞ぎたかったのです。
あの日帰られる時、また明日と毎日会っているかの様に別れ際に言われましたが、私達がこうして食堂で会うのは殿下が帰国してからなので、約半月ぶりでした。

あの日もたまたま食堂で声をかけられて、今日殿下がいらっしゃると口を滑らせてしまったばかりに、あの様な事になったのでした。