『死人還り ーしびとがえりー』

それは、ストロノーヴァ先生が研究されている
トルラキアの民間伝承のひとつ。
安定していない国内政情から生まれたのだと言われていた様な気がします。


かつてトルラキアが他国からの侵攻にさらされていた頃。
故郷から遠く離れた戦地で亡くなり、遺体になっても帰ることが出来なかった兵士達は、一度だけ生まれた日、生まれた場所へ還ってくる。

それは、トルラキアの人々が。 
常に外敵との戦い続きで、心も身体も疲弊していたトルラキアの人々が。
すがった願いであり、ささやかな希望。
何処で、いつ亡くなったのか、命日さえはっきりしない我が子の死に目に会えなかった親達のよすがの願い。


それが長じて現在では、想いを残して死んでしまった者は、自分が生まれた日、生まれた場所へ還ってくる、と一部で信じられるようになった……



図書館で借りた歴史書には、簡単にそう記されているだけでした。