俺ではアグネスを幸せには出来ないのかもしれない。
もう本当の笑顔を返してあげることも無理なのかもしれない。

近付けたと思っても、それは続かず離れて行く。
大切にしたいのに、いつも泣かせてしまう。


「もう少しだけ、足掻かせてください。
 もう無理だと、お前では駄目なんだと……
 彼女から告げられたら、直ぐに身を引きます。
 引き際は……悪足掻きせず……」



先生は立ち上がり、俺の隣に腰を下ろした。
右手を差し出されたので、その手を握る。


「運命は予め決められたものではなく、自ら切り開くものです。
 殿下の運命の、真実の愛を私に見せてください」