「……恋が叶う、なんて、アグネスが思い浮かべたのはクラリスだったのに」

「恐らく……
 姉か他の女性を憎んだとしても、手鏡には憎い恋敵の顔は、決して映りません。
そうなると、アグネス嬢の頭や心には貴方の姿が浮かぶと、アンナリーエ嬢は考えた。
 姉とアグネスが似ている事等、彼女は知らないのですから」

「……」

「ここでも、悪意からではなく、好意から行われたものによって、貴方達の間は捻れています。
 それを解していくのは大変な事です。
 事情を説明したからと言って、アグネス嬢がそれを素直に受け取れるか、わかりません。
 彼女は難しいと思いますよ、殿下はそれでも彼女を求めるのですか?」

「……」

「……私には信じられませんが、運命や真実の愛だの、よく人は口にします。
 それと同様に、反対に決して結ばれない運命の相手がいるのかもしれません。
 もし、それが……」


途中で言葉を切られたが、ストロノーヴァ先生が仰りたい事はよくわかっている。


こんなにうまくいかないのは、アグネスが。
結ばれない運命の相手だから。