この胸が痛むのは

確か、トルラキアの案内書物に載っていた。
この国では月にも意味がある、と。
先生の話の続けたのは、イェニィ伯爵夫人だった。


「手鏡を持ち出したのは、それらしくリーエが
勝手に付け足したのですが、アグネス様が行おうとしたのは、トルラキアの女性なら誰もが知っている……
 満月にお願いして、水面に映ったそれを飲み込む。
 好きなひとを振り向かせる恋のおまじない、なのです」


 ◇◇◇


「アグネス様の事は、ストロノーヴァ様からは
あまり説明は受けていませんでした。
 余計な先入観を持たずに、彼女を見て欲しいと言われたからです。
 同じ様な年頃の生徒を数多く見ているせいか、アグネス様もその様な目で見てしまうのですけれど、あの方は危うい部分を持っていらっしゃいます。
 殿下もお気付きでしょうが、頑なで思い込みが激しいので、より自分を追い込んでしまうのです、体調がおかしくなる程に」