それも気にはなったが、その事よりも先に知って貰った方がいいであろう話を、先生に伝える事にした。


「先生はかつて、アグネスの事を抑制されている様に感じると仰っていましたね。
 あの原因として考えられるのは、母親とアグネスの関係です」 

「……」 

「クラリス嬢から聞いた話ですが、上のふたりの育成に関わる事を先代から許されなかった母親が唯一自分の手で育てられたのが、アグネスだったのです」

「なる程、侯爵夫人からの過度の保護と、干渉。
 母を悲しませたくない故に、アグネス嬢は自分の気持ちを話せなくなる、ですか……」

「その様な母娘関係に陥る親子は多いです。
 互いに依存し合っている部分もありますね」

静かに夫人も話し出した。


「それを教えていただいたので、どうしてアグネス様がアンナリーエと親しくされる様になったのかが理解出来ました。
 侯爵夫人から離れたこの国で知り合ったアンナリーエはアグネス様にとって、自由に生きている憧れの存在になったのでしょうね。
 また、アンナリーエからもアグネス様の抱えてる問題がうっすらと見えていたのかもしれませんね。
 彼女は聡い子なので」

「ナルストワ・アンナリーエをご存知なんですね?
 学園での教え子でしたか?」

「私は教師ではないので、厳密には教え子ではないのですが、リーエからは先生と呼ばれていました。
 彼女が中途退学すると言うので、相談室で話を聞いておりました」

イェニィ伯爵夫人は愛称でリーエと呼ぶくらい、彼女には好意を持っていたんだ。