この胸が痛むのは

あの、素早く段取りした20本の蝋燭やアグネスの手を握って安心させるようにしたのも全部、それらしく思わせる為?


「では、アグネスは術にかかっていなかったにも関わらず、話した、という事ですか?」

「それが人の心の不思議なところなのです。
 特に思春期の乙女は、感性が豊かだ」

先生はソファに深く腰掛けながら話し出した。


「あれはそれらしく見せた催眠術です。
 だから私は疑問形で催眠術?とイェニィ夫人に聞き、夫人にはあえて言葉にせず、披露していますとだけ返事をして貰いました。
 もしアグネス嬢がかつてそれを目にしていて、これは違うと言い出せば、違う術なのだと夫人が言う段取りだったのです」

「しかし、アグネスは見たことがない、と言った」

「出来るだけ気持ちを安定させて、集中して話しやすいように、暗くして……
 若い方の気持ちに寄り添って、話を聞き出すのがお上手なんですよ、伯爵夫人は」

「気持ちの安定というよりは、最初は怯えていた様でした」

「アグネス嬢にはお気の毒でしたが、とにかく 夫人を頼りに思って貰いたくて、あの様に舞台を設定したのですよ」