この胸が痛むのは

「それで貴女はクラリスが邪魔になったのね。
 でも、殿下は?
 殿下には何もしなかったの?」

「……温室でお揃いの、渡したら……
 渡したら、泣いたから、もういい、って。
 悪魔に誘惑されてるだけ……
 そう思いたかった」

「だから、殿下の事は許したのね」

そう言いながら夫人が俺を一瞥して……
その視線が痛かった。
アグネスの苦しみを救いたいなんて、傲慢だった。
自分が仕出かした事こそが、アグネスを苦しめていたのに。


「その時は、アグネスにとってクラリスが悪魔に思えたのね。
 そう思ったのも仕方なかったわね。
 ごめんなさいね、辛い話をさせてしまって」

「……どうしたらいいのか、わからなくて。
 クラリスに何故ドレスが贈られたのかも……
 無理矢理に聞き出した。
 優しくしてくれたお姉様に……意地悪したのに、謝ってな……い。
 ……もうお母様にも、お姉様にも会えないの。
 ……許して貰えない」

夫人はテーブルに燭台を置き、左手から右手へ
アグネスの手を持ち返して握り……
それから、そっとアグネスを抱き締めた。