アグネス・スローン侯爵令嬢に出会ったのは庭園の四阿だった。
彼女はまだ9歳なのに、11の妹バージニアより年上に見えた。
身長も高く、制服を着れば学園の中等部に紛れ込めそうだ。
父親のスローン侯爵が大柄なので遺伝なのだろう。


その日はバージニアのお茶会が午後から催されるので、俺は昼食を終えると、あちこち移動しながら、妹から逃げていた。


「お兄様がいらっしゃると、皆さんお喜びになるのよ」

そんなことを言われても嫌なものは嫌だ。
侍従のカランも、その辺りは心得たもので。
バージニアのお茶会がある午後は自由にしてくれる。
『何処へでもご自由に、しかし捕まっても決して助けません』と、言うわけ。

父である国王陛下は唯一の娘に甘いし、母の王妃陛下も
『あの年頃のご令嬢達は、王子様がお好きなのよ』と、楽しそうに言う。
それで、妹は誰に対しても遠慮がない暴君になっている。