私は『アシュフォード殿下の友達』ではなく、『クラリスの妹』になってしまうのでしょうか?


「夜会が終わったら、今度はアールを連れて、
お里帰りをさせるからバックスによろしく」

殿下とマーシャル様に見送られて、私は帰宅致しました。

母と姉は父により、それぞれの部屋で謹慎させられている、という事でした。
父からは、その後の殿下のご様子を尋ねられました。


あれからマーシャル伯爵夫人が同席された事。
親友のレイノルド様をご紹介いただいた事。
母と姉を悪いようにはしない、と殿下が仰せになった事。
それらを順番に話したので、最後に父は額を押さえて大きく息を吐き。
傍らの兄プレストンから背中を叩かれました。


「あのふたりを悪いようにはしないと仰られた事を、一番先に話せ」



殿下が私に『悪いようにはしない』と約束してくださった事は真実でした。
後日、殿下より父に書状が届きました。

『第3王子の生誕記念夜会のパートナーに、クラリス・スローン侯爵令嬢を望んでいる』

アシュフォード殿下がサインされていた書面には、そう記されていたそうです。


『あのペンで、サインを書かれたのかしら……』

それを知らされた私は、ぼんやりとそんなことを考えていました。