3年間の頑張りに応じた長めの休暇だった。
時間が許す限り、アグネスに会う為に俺はトルラキア城からダウンヴィル前伯爵夫人の邸に通った。

本当は城になど滞在したくはなかった。
お決まりの歓迎晩餐会や夜会や……必要最低限の集まりに参加をしなくてはならないからだ。
晩餐会では、イシュトヴァーン・ストロノーヴァ公爵と。
夜会では代理の、イシュトヴァーン・イオン・ストロノーヴァ次期公爵と顔を合わせたが、イシュトヴァーン・ミハン・ストロノーヴァ先生とはまだ会えていない。


この立場では無理な話だが、6年前居心地が良かったグラニドゥ・シュトー・オステルに泊まりたかった。
たった2泊だったが、フロントの後ろに飾られたヴァンパイア王の恐ろしい顔さえ、恋しく思う。


このままアグネスが卒業するまで、何度かトルラキアに通うのなら。
俺も別荘を購入して、例の肖像画を飾ろうかと思い始めていた。
外国王族御用達のホテルは、こちらの動きがトルラキア王家に筒抜けなので、実質王城に居るのと変わりない。