「……娘の部屋に入るのはメイドだろ?
 侯爵はそれを持ってくるだけじゃないか
 じゃあ、お前が何とかするのか?」

「プレストンに手紙を書いて、俺が取りに行きます」

「息子に手紙で謝ってか?」


王太子は物事を緻密に進める癖に、人のこころに気を遣わない。
鈍感な俺に、言われたくないだろうけれど。


「謝罪は顔を見て、します」

王族は謝罪をしてはいけない等と教えられていたが。
スローン侯爵家は巻き込まれただけ。
どれ程罵られても、俺は受け入れなくては。



プレストンに手紙を書いた。
学園に戻ったとは聞いている。
アグネスが休み続けているのも心配で、花と手紙を贈る。
本当は会いに行きたいが、その時間が取れない。

事件の後始末と、国王退位、新国王譲位の件で議会や打ち合わせが続く。
トルラキアとラニャンの語学の授業も受けている。
その上、リヨンではクーデターが成功したと連絡が来た。


王太子の目はもうリヨンへ向けられていた。
スローンの事故は過去の事になっている。