父が仕事に戻ると同時に、私も学園に戻りました。
初等部は落第はないので、ついズルズルと休んでしまって。
母達が亡くなった日から3週間近くが経っていました。

母と姉を一度に事故で亡くした私に気を遣ってか、友人達から以前のように気楽に週末の遊びに声をかけられる事もなく……
なかなかに淋しい日々でした。

父や兄からも、お休みの日も邸から出ない私を心配している感じが読み取れて。
友人とお互いに気を遣い合うのなら、私はバックスやルビーと遊んでいた方が気楽だと思うのですが……


祖母から父に話があったのも、その頃でした。
祖母のトルラキア王国への移住が、母達が亡くなった事で延びていたのですが、とうとう来月に決まり。
私を連れて行きたい、と父に話したそうなのです。


「まずはお前の正直な気持ちを聞かせて欲しい」

「今、この場で決めなくてもいいのなら、私はお父様の意見が聞きたいです。
 その上で、決めさせて下さい」

「……おばあ様がご心配されているのは、母もクラリスも居ないこの家で、これから女性として学ぶことの多いお前を、ちゃんと育てられるのか、と言うことだ。
 もちろん、マナーやそれに伴うあれこれを教える家庭教師はいるし、例えばダウンヴィル夫人の所に通わせていただくのも良い、と思っている」

「ダウンヴィルには通わない方が良いと思います」

「どうしてだ? 夫人はお前の事を可愛がってくれているじゃないか」