この胸が痛むのは

あの時は姉が悪魔だと思っていた、貴方を誘惑する悪魔だと。
でも、殿下を苦しめて、泣かせた本当の悪魔は私だった。


私は左手に巻いていた、あの組み紐をほどきました。
あの夏にいただいて、湯船に浸かる時以外、肌身離さず……
いい加減、くたびれて、端から糸がほどけると、慌てて針で繕って。

握り締めて階段を駆け上がり、部屋に戻り、文箱の中に仕舞いました。
いつか処分しなくてはいけないもの、と心に決めました。



母と姉が叔父の家族と共に、スローンの邸に帰ってきました。
夜遅かったので、6歳の従妹チェルシーは眠そうでした。
 

「お姉様、会いたかった~」

「こんばんは、チェルシー」

明るく笑ってチェルシーが私に飛び付こうとして、従兄のケネスに止められていました。


「大丈夫?」

全然、大丈夫じゃないけれど。
『大丈夫』そう言うしかなくて。