この胸が痛むのは

仕方なく兄と家令と侍女長で、母達は大きな広間に安置したらいい、御者の方は小さい方で、と決めて。
教会には母と姉の葬儀とは別に、小さい方の聖堂で御者の葬儀を翌日に、とのお願いの使いを出して。
花屋には明日早朝にこちらに花を飾って貰うように。
御者の家族は呼んでくれたかな、と家令に確認もして。
先代には既に早馬を飛ばした事も報告を受けて。
兄は父の分も動かないと、と思ったようでした。


「後からアシュフォード殿下が来てくださるからね。
 アグネスの事を大層気にしていらしたよ」

「お兄様は会われたのですか?」

「父上が早馬を出して報告してからだから、夜になってからだけど。
 馬を飛ばして現場に来て、ふたりを叔父上に預けて見送るまで。
 ……最後まで付いていてくださった」

「……」

殿下は最後まで、姉の側で付いていてくださったのだ。 
長い時間、暗くて寒い森の中で……
それを聞いても、もう嫉妬する事はありません。
姉の側に遅くまで付いていてくださった事に、お礼を言いたいくらいでした。


昨日、温室で。
うつむいた殿下の頭を抱き締めて、その綺麗な金髪を撫でて。

『貴方には悪魔が憑いているのよ。
 大丈夫、苦しまなくていい様に私が払ってあげる』