「何が規約か、この場はお前が用意したものだろう!
 お前が支配しているだろう!」


唾を飛ばす勢いで傍らの王太子に掴みかかった国王陛下の腕を掴んだのは、反対側の席から素早く回り込んだ第2王子のギルバートだった。


「ギル? お前もか?
 おいアシュ、お前もなのか!」



『やり始めたら、中途半端にはしない。
 潰す覚悟をしろよ』

『覚悟を持って』

議会が始まる前、ローラ・グレイシーの証言をもう一度読んだ王太子の声と、いつかのクラリスの声が重なる。


「国王陛下、このまま議事の進行を妨げるのならば、ご退席を」

俺はちゃんと言えただろうか。

誰も自分の言葉に動かない。
この状況を受け入れる事しかないのを国王陛下は思い知ったようだ。
このまま王女を守ろうとすればする程、自分の立場が危うくなることにようやく気付いたのだ。


「退席は……しない!」

自分の知らないところで、処分が決まるのが我慢出来ないのだ。
後から決定事項を伝えられるより。
この場で誰が、どの様な言葉で、自分を処分しようとしているのか、その目に焼き付けようとしているようだ。