この胸が痛むのは

つまり、俺は目を引き付けておく為の陽動。
その間に影を使って王太子は動いていたんだ。 


「お前が出してくれたリストも役立ったし、各家門の位置確認もしてくれたので、その手間は省けたし。
 だからこその、この早さの解決だ」  

事件当日、侯爵夫人とクラリス、御者の3人を連れ帰る前のダウンヴィル伯爵から、およそのかかる時間を聞いて、それに合わせて少し遅れてスローン侯爵家に行かせて貰おうと思った。
それまで侯爵家で、使用人達も含め皆で、ふたりを出迎える準備を、心の準備を整えて貰い、お別れの時間を持って貰いたかった。

滑落現場の坂道、関所の役人からの証言。
それを終えても、まだ時間に余裕があったので、5人で手分けして、王城から坂の始まりまでに存在する邸の持ち主。
門番には王太子の名前を出して主にも内密にしなければ……と、脅して。
主の帰宅時間と使用した馬車の車輪の太さを確認した。

『必要な時には、俺の名前を自由に使え』と、王城を出る前に言われていたからだ。
実は冷酷であると有名な、その名前を出すと。
各邸の門番は協力的だった。
主には決して何も漏らしません、と。

その中でも気になる家門があり、その疑惑と共に王太子に見せたのが、以前俺が渡して貰った簡単なリストだった。
そのリストを作成して、俺に渡してくれたのは……