翌日のお別れの会が終わり、それが済み帰る頃には。
さすがに鈍感な俺でも、彼女が組み紐を結んでいない事に気付く。


「あの、さ……あの、手首の」

帰ろうとした俺を見送りに出たアグネスは小首を傾げる。
これは、この感じは。
俺が聞きたくないことを言い出す、その前触れ。


「切れたんです、切れてしまいました」

覚悟した別れの話ではないので、安心……?
安心したが、せっかく俺の手元にこれが来て、
お揃いで付けられる事になった翌日に?

それを口に出しそうになって、俺は。
そうだった、アグネスの組み紐が切れた日は彼女の母と姉が亡くなった日だ。
身に付けるものが、何もしていないのに壊れたり切れたりする現象は、そういう前触れの様に言われていて。

この話題は避けるべきだと思い、今度トルラキアに行ったら、またあのおばさんから買おうと、
だけ言った。
だが、彼女は直ぐに返事をしてくれない。