辺りを鎮魂の沈黙が包んでいた。

勇猛な侯爵家私設騎士隊が。
侯爵に呼ばれて連れてこられたプレストンが。
報せを受けて慌てて現場に到着した夫人の弟、
ダウンヴィル伯爵が。
俺達が。
侯爵が。

ふたりの前に、皆が跪き、頭を垂れ……
慟哭した。



出来るだけ、ふたりの身体にこれ以上の傷を付けずに引き離そうと試みたが、それは難しい事だった。
ここは森で、夜で、暗く。
先程までの雨で足場は悪く、何よりふたりは汚れたまま。

『ふたりをこの姿のまま、うちに帰らせたくはない』と、伯爵が義兄である侯爵に訴えていた。

ダウンヴィル伯爵の邸に、葬儀前に死者を生前と変わらず美しく整える技巧士を呼ぶ手筈を命じてきたらしい。
伯爵邸は、こことスローン侯爵邸の中間にある。

『この姿を侯爵邸で待つ、年老いた母や幼い姪に見せたくはない。
 必ず今夜中に、送り届ける。
 貴方はプレストンを連れて一足早く、侯爵邸で迎える準備をして欲しい』