この胸が痛むのは

俺は言葉にされないと何も見えていない奴だ。
亡くなって、もう会えなくなってから。
こんな話を聞かされても、どうしたらいい?
出来るだけ夫人とは嫌われないように接触しないようにしていた。

俺が自分の思うままにアグネスに会いに行き、当然のように彼女の隣を確保して侯爵とプレストンを出迎えていたら、こんな話は聞けなかっただろう。


「少し持ち上げて確認したんですよ。
 あの下にふたりは居るんです」

「……早く出してあげないと……ここは冷えるから」

「それは大丈夫かも……しれません……
 娘は妻に抱かれていて、寒くないと思います」

「……」

「咄嗟にクラリスを庇ったのかなぁ……
 娘の背中を妻が抱いているように見えました。
 車軸が貫いて……妻の背中から娘の腹に。
 ……あの状態でふたりが。
 長く苦しまずに済んでいたのなら、それだけで。
 私が願っているのは、それだけ……かな」

俺の知っているこのひとは。
こんな話し方を、するひとではなく。
こんなに心の内を、さらけ出すひとでもなかった。