先程の幼さが消えて、兄は次代の当主に相応しい態度を取ろうとしていました。
私の手を握る兄の掌からは震えが伝わって来ましたが、それを知るのは私だけ。

兄の声に少し落ち着いたのか、家令が何人かに
指示を与えて、ずっと側で話していた侯爵家私設騎士隊長と共にこちらへやって来ました。


「お嬢様はお部屋でお待ちいただいた方が」


私を気遣う隊長の言葉に、兄は。


「アグネスもこの場に居させる。
 後回しの報告は要らぬ想像をさせるだけだ」

「……畏まりました、差し出た事を申しました」

兄がそう命じてくれたので、私もこの場に居ることが出来ました。
多分父なら、私は部屋に追いやられていたでしょう。


「ダウンヴィルには連絡して、伯爵家からも何人か捜索に出ております。
 ダウンヴィルの大奥様も間もなく、こちらにいらっしゃるかと」


大奥様は祖母の事で、伯爵家は母の弟の叔父が
継いでいました。
私が思っていたより事は大きくて、多くの人が
母と姉を探していました。
ですが、捜索人数が必要なら。


「早く、早く王城にもお知らせして、ご一緒に
探していただいたら?」