そういうの?
私が贈られたのは、そういうのとは違う、と仰りたいんじゃないの?
市井の民草が手作りした、そういうつまらない物じゃない。
王都のちゃんとした、高名なマダムアローズの
ドレスなの。
そう思っているんでしょう?


繰り返された告白。
殿下の瞳の色のドレス。
いつもの薄紫色のカードに綴られた愛の言葉。
それをいただいたのよ、と。


姉の微笑みが、優しげな物言いが。
勝者の余裕の様に感じられたのです。


「素人の手作りの品って、ひとつひとつ違う顔をしてる、と言うの?
 お互いに、唯一だ、と誓っている様に思えるわ。
 私もお付き合い出来たら、そういうのが欲しい」


そういうのが欲しいの?
嘘つき! これっぽっちも思っていないくせに!
クラリスの言葉が全て、嘘に思えました。

そんな風に持ち上げるのは、後ろめたいから?
それとも、これくらいで喜んでいる幼い私が哀れに見えるから?
私は身の丈に合ったプレゼントしか出来ないの、してはいけないの。



だから。
言う気はなかったのに……
口に出してしまったのです。


「さっき温室で、フォード様は私の前で泣きました。
 理由はお話になりませんでしたが、お可哀想だったので許して差し上げる事に致しました。
……お姉様は、フォード様が泣かれた理由はご存知ですか?」