「……行方を探されていたスローン侯爵家の馬車が王都外れの森にて発見されたそうです。
 遺体は3体、男性1体、女性2体」

「遺体? 行方を、探して? 何の話だ!」

「男は侯爵家の御者。
 女性はスローン侯爵夫人と、ご令嬢とおも……」

立ち上がって、カランの腕を掴んでいた。
アグネス、アグネス、アグネス!
まさかまさかまさかまさか


「おい、おい、おい」

おい、おい、と。
ただそれだけを繰り返す。
力の加減が出来ない。
他の言葉が出なくて、カランの両腕を掴んで揺さぶっていた。
掴まれ、揺さぶられる痛みで、カランの顔が歪む。


「せ、せいじん……成人女性の、に、2体ともらしいので……
 あ、アグネス様では、ない……」

アグネスでは……ない?
成人女性?



カランの腕を放し、床に座り込んだ。
俺は最低な奴だ。

亡くなったのがアグネスではないと知って。
亡くなったのが、彼女の母と姉らしいのに。


アグネスを失わずに済んだ事を。
ただ、それだけを。
跪き、頭を床につけ、両手を握り。

『ありがとうございます、ありがとうございます』

ただ、それだけを繰り返し。
神に感謝したのだから。