この胸が痛むのは

隣で母が笑っている。


「この子じゃ、面倒見てくれる若い乳母が来てくれたのと同じよ。
 しっかりしてるから、アシュは楽して大人になれないわ」

「しっかりしてて楽させてくれるなら、いいと思うけどなぁ。
 じゃあ、ギルは?
 ガードナー、あれはちょっと弱すぎるだろ」

「来月、お式よ。
 今から差し替えは無理」 

「あいつは何で、あんなのがいいんだろう」


安心したせいで、くだらない事を言い合う両親には目もくれず、兄はカードをビリビリに破き、メモだけを俺に返した。


「これで最悪は回避出来たな。
 もしドレスの返品が成されなくても、侯爵に見つかった時はアグネス嬢への贈り物を姉が預かっただけだと、使用人が証言してくれる」

「……あの侯爵は誤魔化せない。
 サイズが全然違うし、俺の趣味に合わない」
 
「サイズが合わないなら、デビュタント用のドレスを先に贈りました、でいい」

「4年も先に贈る馬鹿だと思われるな。
 大体、デビュタントは白いドレスだろ。
 アグネスには、ちゃんと彼女が望むデザイナーを呼んで、彼女が思う通りのデザインで作らせる」

「……」

「色々迷うなら、何着だって作る。
 全部の各々のドレスに合わせた靴も、何もかも。
 アグネスが望むもの全部だ」