「喜んでくれてるのかな? 泣くくらい?」


言葉に出来なくて、何度も頷いた。
19歳の俺が、情けないことに。
12歳のアグネスの前で泣いた。
目の前の幼い細い腰に抱きついて泣いた。
アグネスは黙って、俺の髪を撫でていた。


どこから話せば、許されるのか。
フォンティーヌ王女を貶めた。
クラリスを盾にしようと、傲慢にも呼び出した。
君の父上にぺしゃんこにされた。
どうしていいかわからなくて、ブレスレットを受け取った。
俺の流した噂が嘘だと認めたくなくて、王女を囲む皆の輪に背を向けた。
自分の力で守りたいなんて、偉そうに言いながら、皆に助けて貰って。

今回のこの責任は全部俺にある。
助けて貰った餞別なのに、面倒なんて思ってた。
イライザは俺を後押しするつもりだった。
周囲が与えてくれる好意に胡座をかいて、自分では全然動かなかった。


この愛しいひとに懺悔したい。
手違いでドレスを送ったことよりも、何よりも。
君にしか言ってはいけない言葉を口にした、愚かな俺を懺悔したかった。


「フォード様、貴方には悪魔が憑いているのよ。
 大丈夫、苦しまなくていい様に……
 私が払ってあげる」

信じられないくらい優しい声だった。

水が、聖水がかけられる代わりに。
聖女は抱き締めた俺の頭に、口付けを落としてくれた。