この胸が痛むのは

『どなたに手配を頼んだのですか?
 誤解されているのですよね?』

『……ガードナー侯爵令嬢だ。
 友達だと誤魔化している、と思われていた』

『イザベラ様は人選ミスですね。
 第2王子殿下の色を全身に纏いたい方ですから』

婚約してから、公の場では毎回紫のイザベラ嬢を思い出したのか、今日初めてクラリスが笑った。


『さっきも言った様に、君にはカランの遠縁の女性として、留学用の旅券を発行するから、勉学取得に燃えてる低位貴族令嬢をカモフラージュ……』 

『発行には、後どれくらいかかります?』


……クラリスに言葉を途中で遮られるのには慣れたな。
もうお別れだけど。
俺が約束させられたのは、出国まで。
無事に想いが叶って、ストロノーヴァ先生に受け入れられたら、彼女はクラリス・スローンに戻る。
そうしたら、またいつか祖母の別荘で会えるだろう。


『多分来週辺りには。
 その週末にアグネスに会いに来た時、お母上と君にもお菓子の箱を手土産に渡す。
 中には旅券と先生の報告書と餞別の現金を入れておく』

『わかりました。
 お世話をおかけしました、本当にありがとうございます』