クラリスにドレスを送る、と決めたのはつい最近だ。
贈るじゃない、送るだ。
トルラキアに持ち込んで、売り払って換金したらいいドレスを餞別に送る。




学園を卒業後、王太子から『何をしたいの?』と、問われて『外交を』と答えた。


「外交か……それはいいね」

「ジィン、俺は間違ってないよな?」

久しぶりに王太子をジィンと呼んだ。 
兄から可否の返事はないが、冷たい視線もないから、間違ってないはずだ。


「……トルラキア語を習ってるんだって?
 あれか、アグネス嬢の影響か?
 前ダウンヴィル伯爵夫人がこっちのタウンハウス処分して、あっちに本格的に移住する、って話だしな」


それは初耳だった。
アグネスは知ってるのかな?


「移住に横槍は入れない、よな?」

「現当主夫人じゃ、止めるけれど。
 年寄りの老後の計画を潰す気はないよ」


良かった、アグネスの祖母はとてもいい人だ。
アグネスの大好きなものを、俺は守りたい。


「トルラキアの次は、何処の言葉を習得するのか、また教えてくれ」

最低でも何ヵ国語を身に付けろ、と言うのか……
この王太子は人使いが荒い。
加えて王太子から、外務大臣としっかり連携して仕事を覚えろと言われ、最近はよく話をする。