この胸が痛むのは

余計な一言を聞かなかった振りをして、王太子が俺に言う。


「その代わり、アグネス嬢に影は付けるぞ」


本当は影なんか、付けたくない。
守りにはなるが、監視しているようで心苦しい。


「安心しろよ、細かく全部を報告させるつもりはない。
 何か動きがあった時だけ、お前に報告させる。
 それは影もわかっている、それならいいだろ?」


ますます発言力の大きくなった王太子、ユージィンに了解は得た。
これで俺に余計な縁組の話は来ない。




「恐らく、祖父は姉の縁談を進めようとしてるんだと思います」

念願だったアグネスとの別荘行きに、合流してきたプレストン・スローンが悲痛な感じで言ってるが、本音はそこまでじゃないよな。
いつかは嫁に行くんだから、何を抵抗してるんだと本音はそうだろ?
でも、俺は将来の義兄にそんな事は指摘しない。
アグネスの前では、優しい俺だから。


父親のスローン侯爵から、プレストンも行かせてやってくれないかと頼まれて、えーと断りたくなったのは本当だ。
イライザ嬢をうっとりさせた花火をアグネスとふたりで楽しむ予定だったのに!って。


だが、今の侯爵家の報告から何となく事情は察していたので、プレストンを先代から引き離したい侯爵の気持ちもわかるので了承した。