この胸が痛むのは

家名や肩書き等、記号だとストロノーヴァ先生が達観したのとは反対に、それを大切に思い、守ろうとする者は存在する。
俺はストロノーヴァ派閥に入ったが、そちらも否定する気はない。

前スローン侯爵、アグネスの祖父はそちら側の人間だ。
今年の夏、先代は領地から侯爵家に出ばってきた。
スローン侯爵家に関する事は、直ぐに俺に伝わる事になっている。
それは3年前、トルラキアから戻ってすぐに両親や兄達にアグネスの事を伝えたからだ。
俺の想いびとが9歳の少女だと知って、家族はしばらく沈黙していた。


「ジニアとエディには内密にしてください。
 エディはおしゃべりだし……
 特にジニアは学園でアグネスに何をするか、
わからないので」

「わかった。
 王子妃教育始めるのか?」


いちばん立ち直りが早かったのは、王太子だ。
両陛下はどちらも呆然としていた。


「それだけはしたくないです。
 スローン侯爵にも拒否されていますし。
 侯爵も俺も、彼女には普通に育って欲しいと思っています。
 歪むことなく、真っ直ぐに」

一言、余計だったか。
王太子妃は縁続きの公爵令嬢で、幼い頃から将来の王妃として教育されていた。