元のようにドレスを箱にしまい、元の場所に戻し。
姉の部屋を出ました。
そして飛び込んだ自分の部屋で泣きました。 


私の手には、先日2年越しでリーエから届けられた組み紐がありました。
おばさんはあれから体を壊して、長らく出会い市に出店出来ていなかったそうなのです。

それは黒地に金と青の糸を絡ませて。
あの日、おばさんに私は手首に巻いた赤い組み紐を見せました。
これと同じデザインで対になるようにしてくださいと。


黒い中に、控え目な金と青。
貴方が『あからさまは好きじゃない』と言ったから。
これなら身に付けてくれると思っていました。


『何を聞かされても、噂なんか信じません。
私は貴方が語る言葉と、自分自身の目で見た貴方の姿だけを信じます』


これは誰かからの噂なんかじゃない。
『あなただけを愛しています』と、クラリスに貴方が語った言葉。
『愛を込めて』と、クラリスに貴方が贈った貴方の色のドレス。
私が自分で確認した事実。
 
胸が千切れるように痛くて、息が出来ない。  

私にはもう、あの夏のトルラキアでの皆の笑顔がうまく思い出せないようになっていました。