『乗り掛かった船だから、たまに見回りをしている』と仰られていました。
何でもバージニア王女殿下や取り巻きのご令嬢達が、どこかで誰かを囲んでいないかと、空き教室や校舎裏を覗いておられるらしいのです。


「後1年だから、ね。
 最後にちょっとは教師らしい事もしないとね」

トルラキア語を学ぼうと思っている事、祖母が夏別荘を購入した事。
話したい事はたくさんあって。
この年度で先生が退職されるまで。
私の図書室通いは続きました。


4年生の最後の日、ストロノーヴァ先生がバロウズの言葉で書かれたトルラキア語の辞典をくださいました。

『君の学ぼうとする姿勢を、僕は尊敬する』

開いた1ページ目に先生はメッセージを書いていてくださっていました。




殿下が通われている高等部とは学園では校舎が離れておりましたので、お会いする機会はないのですが。

あの馬車のなかでお気持ちを明かして下さって以来、2週間毎に殿下はスローンの屋敷に私を訪ねて来てくださいました。