君が好きなんだ、と言われて。
私はまた、ぼうっとなってしまって。
隣の殿下を見ることが出来なくて、斜め前に座る護衛騎士様の方に目をやりました。

殿下に命じられた通り、外の方に身体を向けられていましたが、騎士様が膝の上で拳を握られたのがわかったからです。


今殿下が何と仰せになったか、聞きましたよね?
私の聞き間違いじゃないですよね?

確かめたいのに、騎士様はきっと
『何も聞こえておりません』と、言うのです。


「俺が気持ち悪くて、怖いなら……俺はレイと
代わって貰う様にする。
 だけど出来るなら到着するまでは、このまま
一緒に乗っていきたい。
 まだ、話したいんだ」

私は何度も頷きました。
気持ち悪くないです、怖くないです、と言葉には出来ませんでしたが。
マーシャル様と代わって欲しくなくて、つい殿下の上着の裾を掴んでしまいました。


「まだ話を続けてもいい、って事だよね?」