「本物は、俺って言うんだ。
 私なんてスカしてるあっちが偽物。
 聖水をかけるの? いいよ、かけても。
 悪魔は払えても、俺は払えないよ」

「……」

「君は俺が本物のフォードだって、わかってる。
 もう落ち着いた? 立ち去らないからね。
 話をしよう?」


かけて欲しいならかけてあげる、そう思った私は悪魔に水をかけました。
悪魔め、私に笑うな、優しく……笑って……
手を差し出さないで。

本当に水をかけられると思っていなかったのか、悪魔は少したじろいで、それから胸を押さえて苦しみ出しました。


苦しい振りをしばらく続けていたアシュフォード殿下も、もう疲れたのか頭をあげられて。
もう少し苦しんで欲しかったのに。
私が笑い出すまで。

私が手を乗せないので、殿下の方から手を握ってきました。


「聖女様、そろそろお茶の時間ですから、ホテルへ戻りましょうか」