この胸が痛むのは

「それ、滞在費とか旅費はアシュ持ち?」

……そうするつもりなんだが。
しかし、俺に宛がわれてる第3王子予算は使えないだろうな。
何かを換金するか。
俺は贅沢出来て、好きなものを好きなだけ買えると思われてるだろうけど、その実は全然自由になる金はない。

小遣い程度なら、ある程度は自由だ。
だが国外の旅費となると……財務大臣、つまり
スローン侯爵の承認がなければ、これっぽっちも引き出せない。
……俺は持ってる金目のものを思い出そうとした。


「俺とカランで何とかするから、俺も連れて行けよ?
 高等部の登校日の多さ、うんざりだよ」

レイが何とかする代わりに、一緒に行くと言う。


「予算が駄目だったら、城下で換金だろ?
 それも任せて」


打てば響く男の手腕はわからないが、父親のグレゴリーよりは確かに頼りになる。

こうなると、王妃陛下からのブレスレットを売り払う、と言ったクラリスの気持ちがよくわかるな。
彼女にも自由になる金なんか、ないんだ。

今回の絵葉書のお礼に、いつかクラリスがトルラキアへ旅立つ時は、餞別にスムーズに国外に持ち出せるものを渡そう。



それで旅の資金については、レイに任せるとして。
外務大臣には再び無理をお願いして、俺とレイの急ぎの旅券の発行を頼む。
普通2週間かかるそれを3日待ってくれと言う。
ありがたくて頭を下げたら、
『王子殿下は頭を下げてはいけません』と注意される。