約束の週末、スローン侯爵家にアシュフォード殿下がいらっしゃいました。
事前に伝えられていたご要望に合わせ、母は控えめに殿下をお迎えし、姉と兄は最初にご挨拶しただけで引き下がり、同席しようとはしませんでした。

庭には、殿下と私ふたりだけの茶席が設けられていて、初めて接待役を任された私は、朝から落ち着いていられませんでした。


父からの注意があったようにバックスと子犬達に大きなリボンは結ばれず、ごく自然な感じで
『第3王子殿下ご訪問』は、始まりました。


殿下の前に、私はバックスの5匹の子犬達を並べて見せました。
けれど、それは一瞬です。
子犬達は、それぞれが思い思いの方向へ直ぐに散ってしまうんですもの。
並べてお見せるのは無理だとわかりました。

殿下の護衛騎士様やアシュフォード殿下の手をお借りしながら、1号から捕まえて顔をお見せして、その子の説明をしていく事にしました。  
バックスが産んだ5匹の子犬に、生まれた順から我が家では1~5号と名付けていました。