結局、別荘に行くことはなくて。
それを兄のギルバート第2王子に伝えると、
『えー、今更……』と、言われた。
今年は俺に行かせてくれ、と譲って貰ったから
申し訳なかった。
花火祭りと同じ様な日程で、ガードナー侯爵領へ行き婚約1周年を祝う約束になっているらしい。


それを聞き付けたバージニアに
『ご一緒しましょう』と言われて、追い払った。
アグネスの事や、これまでの苛めの事を怒りたいけれど、やはり妹にも何か思いがあってそんな真似を続けているのかも、と思うと……複雑だ。

他に苛めに参加していた者の名前をストロノーヴァ先生に聞くと、グレイシーの名前が出た。
聞き覚えがあるので記憶を辿ると、あの夜会で声をかけてきた二人組が浮かんできた。
あのゴージャスの方だ。
貴婦人達が王妃陛下や王太子妃殿下に気を遣って控えめに装う王家主催の場に、やたらと豪華な
ドレスを纏っていた1学年上の伯爵令嬢……
あれの妹か。


妹を責めるだけでは駄目だし、ストロノーヴァ先生には相談を拒否されたし、両陛下に言うとまたアグネスが逆恨みされそうだし……何もかも与えられているバージニアの不満がわからない。