『アグネスからの返信を受け取られたアシュフォード殿下は私にも、話を通してくださった』と、夕食の席で父は母に話しました。


「呉々も、過分な接待は不要である、との仰せだ。
 お前はやり過ぎてはいけないぞ」

「……まぁ、旦那様、やり過ぎ、とは?」

「バックスと子犬達の首に、大きなリボンを結ぶ、とかだ」


父の返事に、母が固まりましたので。
さすがの父の慧眼だと思いました。


「……でも、お茶菓子くらいは殿下のお好みの物をお出ししたいですわ。
 アグネス。貴女、殿下からお好きなものは聞いているの?」

「甘過ぎず、辛過ぎず、酸っぱ過ぎず、がお好きだと仰っていたような?
 それよりお父様、もし殿下が子犬を連れて帰りたいと仰られたら、差し上げてもよろしいのですか?」

「……召しあげられるのが子犬であろうと、わが家門の誉れだな」


父は真面目な顔をして、そう答えて頷き。
母は難しい表情になり。
姉は下を向いて肩を震わせて。
兄はこらえきれず、吹き出してしまわれました。


つくづく私は子供でした。
皆から殿下との親しさを褒められた、と思い込んだのです。
母に、姉に、問われるまま。 
これからも、私が知る限りのアシュフォード殿下をお教えしようと、得意にさえなっていたのです。 


それが盗まれる事になるとは、思いもせずに。