この胸が痛むのは

スローン家の代々の愛犬バックスが産んだばかりの5匹の子犬の話を私はお聞かせしたのです。


「子犬に……って。
 ねぇ、クラリス、プレストン。
 アグネスだけでは心許ないわ。
 貴女達も週末……」

「嫌よ」「嫌です」

姉と兄が同時に言って、ふたりは顔を見合せました。
兄が肩をすくめて、姉に話すよう促しました。


「さっきも言いましたけれど、アシュフォード殿下ははっきり申し上げて、あまり社交的な御方ではないのです。
 今回のご訪問も、アグネスとバックス達だけに会いに来られるのです。
 余計な私達が顔を出せば、殿下がお気を悪くされるのは明白ですわ」

「……本当に、難しい御方なのね」

姉の言葉に、母は同席させるのを諦めたようでした。
そして私は拙い字でお返事をしたため、別室でお待ちになっていた御使者様に渡しました。


『王子見習い様
 お花とチョコレートをありがとうございます
 虫歯になるのは嫌なので、歯磨きはがんばります
 バックスと彼女の子供達とアグネスで、お待ちしています』