クラリスの返事に、俺はそうだそうだと思い出した。


「そうだ! そもそも何で、弟があの場に居たんだ?」

「妹が頼んだからに決まっているでしょう」

クラリスがすかさず答える。
……そうなんだ、アグネスが頼んだのか。
てっきり俺は侯爵が俺を見張らせる為に息子に 同席を命じたのかと思ってて……
いや、思いたかったんだけれど……
そうか、アグネス本人が。


ガーランドへ行く前に会った時は普通にしていたのに、今回は心のこもっていない笑顔だし、目もあまり合わせてくれなかった。


『あまり話さないね?』と聞いても、クラリスが留守にしててごめんなさい、とか言う。
『別にあんな女は居なくても、全然構わない』
そう言いそうになるのを我慢した。
妹にとって大好きな姉を『あんな女』呼ばわりすれば、失礼に当たるだろうし。
 

微妙にはぐらかされているようで、会話が噛み合わない。
祖母の元にとどまり続けるアグネスに渡して貰った手紙には、
『クラリスをパートナーにしたのは、特別な意味はないよ』と書いたから、わかって貰えたと思っていたのに。
伝わっていなかったのだろうか……