「みぃーつけた!」

そう言いながら、私の腕を掴んだのは。
バージニア王女殿下のお茶会でのかくれんぼが
始まる時。

『鬼に見つかるまで、決して出てきてはいけませんよ』
私にそう命じた、6年生のローラ・グレイシー
伯爵令嬢でした。


お昼休みの図書室でした。
私は次回、アシュフォード殿下にお会いした時に渡すクッキーの他に、別のお菓子も作りたいな、と思っていて。
帰宅してから料理長に相談する前に、殿下がお好みの甘くないお菓子があるのか知りたくて、図書室にお菓子の本があれば、と軽い気持ちで立ち寄ったのです。
いつも私の友人達はお昼休みは校庭で遊ぶので、その日私はひとりでした。


「貴女は皆で楽しくかくれんぼしていたのに、
途中で隠れるのをやめて、アシュフォード殿下と長い間お話をしていたのでしょう?」

グレイシー伯爵令嬢に腕を取られて、そのままぐいぐい引っ張られて。
私が連れてこられたのは、図書室の一番奥の専門書が並ぶ、初等部から高等部までの生徒が誰も来ないような、そんな本棚が並んだ一角でした。