美しい兄がご自慢のバージニア王女殿下は、何かと自分のお茶会にアシュフォード殿下を連れ出そうとされていたのです。


「スローン嬢がお茶会に戻りたいのなら、エスコート致しますし。
 お帰りになりたいのなら、お見送り致します」

「どちらにしろ、お茶会に戻って王女殿下にご挨拶して、ですよね……」

「戻りたくないなら、戻らなくても大丈夫です。
 王女殿下には私からうまく話しておきますので、ご心配なく」

一介の、何の見習いをしているのか不明なこの
御方が王女殿下にとりなしてくれる等、あり得
ないことなのに。
何故か疑問も持たず、その言葉をそのまま受け
取った私でした。


私には7歳上の姉が居て、4歳上の兄が居て。
まだ子供の私を彼等は同等に扱ってくれていたので、実際の年齢より知識も考え方も、大人びていると常々言われておりましたのに。

こんな怪しげな、本当か嘘かわからない話をする初対面の男性に、少しの警戒心も持たずに懐いてしまった私でした。


私達はその後も、そのまま四阿で会話を続け……
既に『フォード』『アグネス』と、7年も年の差があったのに、お互いに名前も呼ぶようになっておりました。