アシュフォード王弟殿下はとてもお優しいひとです。
それはわかっています。

初めてお会いした王城で。
私はほんの9歳の子供でしたが、この方の優しさは本物だとわかったのです。


誰もがそうお認めになるアシュフォード殿下の
紫の瞳が。
射抜くように、私を見つめています。


「これは……一体どういうつもりだ?」

あぁ、今この場で。
あの日から初めて貴方は、私を見てくださって
いる。
姉を喪ってしまったあの日から……初めて。
私自身を貴方は見てくださっている。

そう気付いて、私は気分が高揚しました。
自然と、喜びに我知らず微笑んでさえいたので
しょう。


それを見逃さなかったアシュフォード殿下の声音は、今まで聞いたことがないような低く、冷たいものでした。


「アグネス! 何故嗤っている?
 それは私を愚弄している、と受け取っていいのだな?」