「え?」
「ごめん、何でもない」
北川さんの困った顔を見て、
俺は調子に乗ったと後悔した。
北川さんは他の男が好きなんだから、
あからさまに好きアピールしたら
困るに決まってんじゃん。
「俺、もう大丈夫だから、
戻りたかったら戻っていいよ」
「まだ、加瀬さんと話していたいです。
楽しいから」
俺は結構元気になったみたいだ。
北川さんのその言葉を聞いて、
ドキドキしたし、
よっしゃ、楽しませてやろうという気力がわいてきた。
そのまま北川さんと深い話をしていたら、
夜になり、一緒に晩御飯を食べようということで、
俺たちは近くのスーパーへ買い物に行った。
「俺、持つから」
北川さんが先にかごを取ったから
俺は自分で持とうと手を出した。
「いや、いいんです!
自分で持ちたいんです」
「重いよ?」
「いつも一人の時は持ってますもん」
頑なでかわいいから、そのままにしておいた。
ま、後で重くなったらかわればいいだろ。



