その日は眠れなかった。

田中さんはあの後、
言い過ぎたって言って、
謝ってきたけど、
俺は彼に感謝してる。

田中さんは北川さんが前に話してた、
自分を見る鏡だった。


俺は着替えもせず、食事もせず、
シャワーも浴びず、
ソファーの上で朝を迎えた。

そして、目の前で光るスマホを開くと
北川さんから
LINEが来ていた。


相変わらず、ものすごく長くて、
小説みたいだったけど、
言いたいことは「何かあったの?心配」ということだった。


土曜日の朝はいつもジョギングと決まってるけど、
そのままLINEは既読スルーし、
またソファーの上で目を閉じた。

何時間経っただろう。
突然インターホンが鳴り、俺は体を起こした。

そういえばアマゾンで、
クリスマスツリーを買ったんだった。

密かに北川さんと
飾り付けする方向に持っていこうとして。


あれ置き配にしたのに、
大きすぎで出来なかったのかな?

俺はシャチハタを握ってドアを開けた。


「加瀬さん!」

でも、外にいたのは、ツリーじゃなくて、
大好きな隣人だった。