「おーい、イケメーン。
ちょっと来てくれー」
「ごめん。
田中さんが呼んでるから」
「あ、加瀬さん!」
「これ、ありがとう」
北川さんは何か言いたそうに
口を開いた。
でも、俺は急がなくてもいいのに、
さっさと田中さんの元へ向かった。
なんで、差し入れとかしてくれんの。
なんで、フォローしてくれんの。
俺のこと、なんとも思ってないくせに。
ただ北川さんは優しいから?
誰にでもそういう人なのか?
北川さんにとって俺ってなんなの?
家族以外に頼れる人って、
結局なんなの?友達?同僚?
俺の何がダメなの?
「邪魔して悪いねぇ。
このエクセルの表をさ、
こういう感じでやりたいんだけど、
イケメン、いつもみたいに
英語みたいなのを書いて、
うまいことしてよ」
「VBAですね」
そうそう、それ、と言って田中さんが自分の席を空けた。
さすがに人からの頼まれ事だから、
集中して手を動かした。
「うぉぉ。やっぱ、すごなぁ、イケメン」
「田中さん、
俺のこと、どう思いますか?
彼氏として」
「え?」



