ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない



しかし、俺が店員を呼びにいこうとすると、
「あ、そうだ。こうしてみたら…」
と言って、彼は蛇口のてっぺんを
思い切り拳で叩いた。


何やってんの。こいつ。
これは調子の悪い昔の箱型のテレビや
メンテナンス前の複合機じゃないっての。
金属を素手で叩いて何の意味が…

と思ったら、出た。

水がどばーっと。

「あ、出ましたね」

彼はレバーを少し戻して水の量を調節する。


え?なんで?!
どういうこと?何かのスイッチ?
そういう蛇口?

頭の中はクエスチョンマークが散乱していたけど、
顔に出すとかっこ悪いから
平然を装ってお礼を言った。


「いえいえ。
こんなイケメンのお兄さんと
少しでも話せて楽しかったので」

彼はそう言って、はははと笑いながら頭を掻いた。

なんだ、分かってんな。
俺がイケメンって。

「モデルさんか何かですか?
その辺のイケメンさんのレベルを超えてますよね」