ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない


手洗い場は一つしかない。

俺は何度もレバーを上げたり下げたりしてみた。
うん、出ない。一滴も。

故障か。
よし、何が原因か調べてみよう。

しかし、全くわからなかった。
レバーは動くし、水が出ないなら、
元栓のようなもの自体が閉まってるのかもしれない。

新しいお店だし、
まだ不具合とかがあるのか。

けど、手を洗わないわけにもいかない。

「どうされました?」

俺はさっき入って来た奴の顔を見てなかった。
そこに立っていたのは、
北川さんと一緒にいた男だった。

「水が出なくて」
「それは大変ですね。
ちょっと見てみましょうか」

どうせどうにもできないのに、
彼は蛇口付近をじっくり見て、
あー!とひらめいたように声をあげた。

「これは、どうにもできないやつですね」


いや、そんなこと分かってるし。