ハイスぺな俺が北川さんに相手にされない



男は大きな声と
大きなジェスチャーを交えて
店員と外国人客に話しかけ始めた。
もちろん、日本語で。

すると、今まで、
お互い意思疏通がとれずちょっとイライラした
雰囲気だった彼らが、笑顔になり、
和やかな空気が流れ始めた。

彼は日本語、向こうはポルトガル語を話しているのに、
意思疎通がとれているのは
彼の人のよさそうな笑顔と
ジェスチャーのお陰かもしれない。

結局俺が出る幕はなかった。


でも、立ち上がってしまったから、
そのままお手洗いに行った。


なんなんだ、あいつ。
北川さんにも好かれて、
ハイスペ男子の俺の出番もかっさらって。
大したスペックもなさそうなのに。

気に食わないな。

その時、ドアが開いて、誰かが入ってきた。
俺はさっさと手を洗って出ようと
ちょっとしゃれた水道の蛇口のレバーを持ち上げた。

あれ?水、出ない。