「四桁はもう電卓でよくないですか?」
「じゃあ三桁も電卓でいいだろ」
「あれ?なんか怒ってますか?」
「怒ってないけど、俺の前で他の男誉めんのやめて」
「え?は、はぁ…
すみません…」


映画の中はなんだかいいムードになってきた。
もうちょっとで終わりだな。


「北川さん、さっきからコメントが
止まってるけど、どした?」
「……」
「おーい」
「……」

これは、寝たな。

「じゃあ、おやすみ」

俺は電話を切った。


こんなの彼氏みたいじゃん。
おやすみの電話なんて。

今まで色々あったけど、
俺、前よりは北川さんに近づいてるよな?


めちゃくちゃいい感じだし。

北川さんの彼氏になれる日も
近いかもしれない。

そう思ったけど現実は全く別だった。



俺は頑張って登ってきた山の崖から、
突き落とされることになるなんて、
この時は、まだ知らない。