「では…」
「……」
俺は何も答えず、鍵を回した。
北川さんの方は見なかったけど、
スーツケースの車輪の音で、
北川さんが去って行ったのが分かった。
部屋に入ると、ソファーに寝転がる。
しんとする部屋にアナログ時計の
秒針の音が響く。
俺…なんで北川さんなんだろう?
ふと思った。
女の子は世界中に山ほどいるし、
俺はモテるから、かわいい子と付き合おうと思えば
いくらでもできる。
恋人になってくれる可能性の薄い北川さんに
ここまで執着して
なんの意味がある?
きっと彼女より美人で、料理もうまくて、
性格もよくて、器用な子はたくさんいるはずなのに、
なんで北川さん?
俺に興味がないのに。
他に好きな男がいるのに。
だったらもう違う人にいけばいい。
なのに、なんで…
こんなに胸が痛い?



